2026/6/20
新潟のスーパーに並ぶ「CGC」ロゴ、その誕生と地域を支える協業の仕組み

新潟のCGCグループってなに?詳しく教えて
キュリオす
新潟のスーパーでよく見かける「CGC」ロゴ。これは全国の中小スーパーが「志村戦争」を機に結集し、共同仕入れやPB開発で大手に対抗する「コーペラティブチェーン」の証だ。地域に根差した店舗が独立性を保ちながら生き残るための戦略と、その現在地を探る。
見慣れたロゴの裏側にあるもの
旅先で見かけるスーパーマーケットは、その土地の食文化や日常を映し出す鏡のような存在だ。陳列された地場産品や、見慣れない調味料の並びに、旅人はささやかな発見をする。しかし、多くの人が意識することなく手に取る商品の中には、全国共通の「CGC」というロゴを冠したものがある。特に新潟のような地方都市でスーパーマーケットの棚を眺めていると、大手チェーンのプライベートブランドに交じって、このCGCマークの商品がかなりの割合を占めていることに気づくだろう。では、この「CGCグループ」とは一体何なのか。なぜ、特定の企業名ではないこのロゴが、これほど多くの店舗に浸透しているのか。その問いは、日本の食品流通の歴史と、地域に根ざした小売店の生存戦略へと繋がっている。
「志村戦争」が起こした協業の萌芽
CGCグループの物語は、1960年代、東京の片隅で起きた一つの価格競争に端を発する。1963年、東京都板橋区志村で、当時2店舗を展開していた地元のスーパー「三徳」の至近に、大手資本である西友ストアー(現・西友)が進出してきたのだ。これが後に「志村戦争」と呼ばれることになる激しい攻防の始まりだった。三徳の専務(当時)だった堀内寛二氏は、自社の仕入れ原価よりも安価でナショナルブランド商品が販売されている光景を目の当たりにし、中小小売店が単独で大手資本に対抗することの困難さを痛感したという。
この「規模の格差」という現実は、堀内氏に「1社では難しいが、100社集まれば大手と同じ条件で戦える」という発想をもたらした。合併による規模拡大ではなく、経営の独立性を保ちながら仕入れや物流といった機能を共同化する「協業」の道を模索し始めたのである。その道のりは平坦ではなかったが、堀内氏の呼びかけに応じた中小スーパーマーケット経営者たちが結集し、1973年10月、三徳の貿易部が独立する形で株式会社シジシージャパン、すなわちCGCグループが誕生した。 設立当初のメンバーは三徳を含む10社、資本金は5000万円という規模だったが、そこには「自分たちの店と地域を守り抜く」という強い意志が込められていた。 奇しくもこの時期は第一次オイルショックが起こり、トイレットペーパーや洗剤などの生活必需品が店頭から消えるパニックが生じていた頃であり、CGCグループは設立直後に品薄となった商品の緊急輸入を行うなど、その協業の意義を早くも発揮することになる。 こうして、全国の中堅・中小スーパーマーケットが手を組み、共同で食料品を扱う「コーペラティブチェーン(Co-operative Grocer Chain)」という、新たな流通の形が動き出したのだ。
独立性を保つ「協業」の仕組み
CGCグループは、単なる共同仕入れ機構という枠を超え、加盟企業の経営を多角的に支援する「協業組織」として機能している。その中核をなすのは、共同仕入れ、プライベートブランド(PB)商品の開発、共同物流、そして情報・教育支援という四つの柱である。
まず「共同仕入れ」は、中小スーパーが大手メーカーから直接、大量に商品を仕入れることを可能にする。これにより、一社では得られない価格メリットを享受し、大手チェーンと遜色のない価格で商品を消費者に提供できる基盤を築いている。 次に重要なのが「プライベートブランド(PB)商品」の開発だ。CGCグループは、お客様の声を基に、シジシージャパンと加盟企業が協力してオリジナル商品を開発している。 現在、その数は約1,900品目に及び、基幹ブランドの「CGC」のほか、上質ラインの「CGC PRIME」や自然派の「CGC ORGANIC」など、多様なニーズに応えるブランドを展開している。 これらのPB商品は、宣伝広告費を抑えることで、ナショナルブランドと同等の品質ながら手頃な価格を実現しているのが特徴である。 また、はごろもフーズとの共同開発による「シーチキン」や、たらみとの「たっぷり果実と果汁のゼリー」といった有名メーカーとの「ダブルブランド」商品も手掛けており、品質へのこだわりを示している。
「共同物流」は、複数の加盟企業が共通の物流センターを利用することで、輸送コストの削減と効率的な商品供給を可能にしている。これにより、各店舗は必要な商品を必要な時に受け取ることができ、在庫管理の負担も軽減される。 新潟県内にも「新潟JDセンター」という物流拠点が設けられており、地域への安定供給を支えている。 最後に「情報・教育支援」では、経営幹部からバイヤー、店長に至るまで、階層別の教育・研修プログラムを提供している。 また、人事教育委員会を毎月開催し、「働き方改革」や「女性活躍推進」といった現代的なテーマについて各社の取り組みを共有するなど、加盟企業の「人財」育成にも力を入れている。 これらの協業活動を通じて、CGCグループは個々のスーパーマーケットが独立性を保ちながらも、大規模な小売チェーンに匹敵する競争力を獲得できる仕組みを提供しているのだ。
異なる連鎖形態が描く流通の多様性
CGCグループが採用する「コーペラティブチェーン」という形態は、日本の小売業界において多様な連鎖モデルの一つとして存在している。フランチャイズチェーン(FC)や、大手資本による垂直統合型チェーンとは異なる特徴を持つこのモデルは、地域に根差した中小スーパーマーケットが独自の経営を維持しながら、規模のメリットを享受するための選択肢となってきた。
フランチャイズチェーンは、本部が商標、商品、経営ノウハウなどを提供し、加盟店がその対価を支払うことで事業を展開する。この場合、加盟店は本部の定めたルールや方針に厳格に従う必要があり、経営の自由度は比較的低い。一方、CGCのようなコーペラティブチェーン、あるいはボランタリーチェーンと呼ばれる形態では、個々の加盟企業は資本的にも経営的にも独立性を保っている。 加盟企業が主体的に組織を構成し、共同で仕入れや商品開発、物流を行うことで、コスト削減や競争力強化を図る。 これは、各地域で培われた独自の品揃えやサービスを維持しつつ、大手に対抗できる仕入れ力を得たいと考える中小スーパーにとって、魅力的な選択肢となる。
日本にはCGCグループの他にも、全日食チェーンやニチリウグループといったボランタリーチェーンが存在する。 全日食チェーンは1962年に前身組織が設立され、全国約1,800店舗が加盟し、地域密着型の店舗展開を推進している。 ニチリウグループは1974年に7社で発足し、現在は17社の有力チェーンストアと3協同組合、約2,000店舗が加盟しており、国内外からの商品輸入や共同仕入れに強みを持つ。 これらの組織は、それぞれ加盟店の規模や事業内容、重点を置く協業分野に違いがあるものの、根底には「単独では難しいことを共同で行う」という共通の思想がある。
対照的に、イオンやセブン&アイ・ホールディングスのような大手資本系チェーンは、自社グループ内で企画から製造、販売までを一貫して行う垂直統合型のビジネスモデルを構築していることが多い。これにより、強力なブランド力と効率的なサプライチェーン、そしてスケールメリットを最大限に活かした価格競争力を有する。新潟県内でも、かつて清水フードセンターがイオングループ傘下に入り、店舗がイオンやイオンスタイルに転換されるなど、大手資本による再編の動きは活発だ。 CGCグループの存在は、このような大手主導の市場において、地域の中小スーパーが「協業」という形で独自の活路を見出し、消費者に対して多様な選択肢を提供し続けるための重要な役割を担っていると言えるだろう。
新潟の食卓を支える協業の現在地
新潟県内を歩けば、「原信」「ウオロク」「ナルス」「イチコ」「マルイ」「リオン・ドール」といったスーパーマーケットの屋号を多く目にするだろう。これらの多くがCGCグループの加盟企業である。 例えば、アクシアル リテイリング傘下の原信やナルスは新潟県内で強い地盤を持ち、ウオロクは新発田市発祥で鮮魚に強みを持つスーパーとして知られる。 新潟県内のスーパーマーケット市場は、これらの地元企業に加え、イオングループなども存在感を放っており、競争が激しい地域の一つだ。
CGCグループの加盟企業であることは、これらの地域スーパーが単独では難しい規模の経済を享受できることを意味する。共同仕入れによるコストメリットはもちろん、CGCブランドの約1,900品目にも及ぶプライベートブランド商品を展開できることも大きい。 これらのPB商品は、消費者の日常的な食卓を支える存在として定着しており、手頃な価格と安定した品質で支持を得ている。例えば、CGCの「トントン奴とうふ」や「あらびきポークウインナー」などは、多くの家庭でリピートされる人気商品となっている。
また、CGCグループは単に商品を供給するだけでなく、地域社会への貢献にも力を入れている。新潟県では、原信、ウオロク、リオン・ドール コーポレーションといったCGC加盟企業が、地元企業と連携して食品廃棄物を肥料化し、その肥料を使った農産物を販売する「リサイクル・ループ」を構築している。 これは、SDGs(持続可能な開発目標)の目標12「つくる責任つかう責任」にも繋がる具体的な取り組みであり、地域におけるスーパーマーケットの役割が単なる小売業に留まらないことを示している。 さらに、CGCグループは1982年から「全国児童画コンクール」に協賛し、子どもたちの情操教育を支援しているほか、1983年創刊の料理情報誌「ふれ愛交差点」を毎月125万部無償配布するなど、食を通じた文化活動にも取り組んでいる。 これらの活動は、地域に密着したスーパーマーケットが、単なる買い物をする場所ではなく、地域の生活文化や環境、教育を支えるインフラとしての役割を担っていることを示しているだろう。
見えない連携が地域に紡ぐもの
新潟のスーパーマーケットの店頭でCGCのロゴを見かけたとき、それは単なる安価なプライベートブランド商品以上の意味を持つことに気づかされる。このロゴの背後には、全国の中小スーパーマーケットが、大手資本の攻勢や人口減少といった現代の課題に対し、個々の独立性を保ちながらも「協業」という形で立ち向かう、半世紀にわたる歴史と戦略が隠されている。
CGCグループの存在は、一見すると「規模の経済」を追求する現代の流通業界の潮流に逆行するようにも見えるかもしれない。しかし、その本質は、画一的なチェーン展開ではなく、各地域に根差した店舗がそれぞれの個性を活かしつつ、共同の力で競争力を維持するという、ある種の「分散型ネットワーク」の強さを示している。新潟の原信が地元の食材を重視したり、ウオロクが鮮魚に強みを持ったりといった各社の特徴は、CGCグループに加盟しているからこそ、大規模な共同仕入れやPB開発の恩恵を受けながらも守り抜かれている側面があるのだ。
現代において、地方のスーパーマーケットは、人口減少や高齢化、そして後継者不足といった喫緊の課題に直面している。CGCグループ代表の堀内淳弘氏は、「儲かるか儲からないか」ではなく、「地域を守れるか」が勝負になると語り、地方から撤退する大手チェーンがある中で、CGCグループのメンバーは「地元から逃げられない」という覚悟を持って店を開け続けていると述べている。 この言葉は、CGCグループが単なる経済合理性だけでなく、地域社会への深い「愛着」と「責任」をその活動の根底に据えていることを示唆する。
CGCグループの取り組みは、日本全国に広がる地域社会の多様な食文化と、それを支える中小小売店の存続に静かに貢献している。新潟の食卓に並ぶCGCマークの商品を見るたびに、私たちは、目に見えないところで働く多くの人々の連携と、地域を守り抜こうとする強い意志の存在を感じ取ることができるだろう。それは、現代社会において見過ごされがちな、地域と人々の結びつきの強さを再認識させるものなのである。

ゆーたなかお
キュリオす開発者。ひとり編集長。
旅と食が好き。どこにでもいます。
参考
- 知られざるCGCの原点と、“最強連合体”への進化の歴史を振り返る _流通・小売業界 ニュースサイト【ダイヤモンド・チェーンストアオンライン】diamond-rm.net
- 総年商5.5兆円! スーパー最強連合「CGC」の全貌と存在意義 _流通・小売業界 ニュースサイト【ダイヤモンド・チェーンストアオンライン】diamond-rm.net
- シジシージャパン - Wikipediaja.wikipedia.org
- 日本全国スーパー探訪番外編、CGCグループ | 日本全国スーパー探訪、地方食文化の欠片を探す旅ameblo.jp
- CGCグループ案内|株式会社シジシージャパン|CGC JAPANcgcjapan.co.jp
- CGCについて - スーパーマーケット TSURUYA ツルヤtsuruya-corp.co.jp
- CGCとは | 株式会社北陸シジシーhokurikucgc.co.jp
- ボランタリーチェーンとは?フランチャイズとの違いやメリットを解説! | POS+(ポスタス)の業界特化POSレジ・POSシステムpostas.co.jp
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