2026/6/8
敦賀のハニー新鮮館エフレ清水店、地域に愛される理由

エフレ清水店 ハニー 新鮮館について詳しく知りたい。
キュリオす
福井県敦賀市のハニー新鮮館エフレ清水店は、地元産品や名物「フジバーグ」の販売、地域密着のサービスで長年親しまれている。協同組合ハニーの一員として、大手チェーンとは異なる独自の価値を提供し、地域社会に貢献するスーパーマーケットのあり方を探る。
福井県敦賀市清水町の一角に立つ「ハニー新鮮館 エフレ 清水店」は、一見すると地方都市の一般的なスーパーマーケットに過ぎない。しかし、その店内を歩き、並べられた商品や店内の雰囲気に触れると、単なる日用品の供給拠点ではない、より深い地域の営みが感じられるのだ。特に目を引くのは、地元敦賀産の野菜や魚介が占める棚の広さ、そして「フジバーグ」のような、この店でしか手に入らないと謳われる名物の存在である。なぜ、この場所で、これほどまでに地域に密着したスーパーマーケットが成立し、長く親しまれ続けているのか。それは、単に「地元の店だから」という一言では片付けられない、この土地ならではの歴史と、店を支える人々の具体的な取り組みの中にその答えがあるだろう。
株式会社エフレの歴史は、昭和38年(1963年)にまで遡る。地域に根差した食品スーパーマーケットとして敦賀の地で創業し、以来、地元の繁栄と共に歩んできたという。初期の具体的な店舗展開や事業規模については詳細な記録が少ないものの、地域の食生活を支える役割を担ってきたことは想像に難くない。
やがて、福井県内の複数の食品スーパーが集まり、協同組合を設立する動きが始まる。昭和47年(1972年)2月15日、福井県内の食品スーパーによる共同仕入れ機構として「協同組合ハニーチェーン」が設立された。 エフレもこの協同組合に加盟し、共同購買や共同配送、店舗指導といった機能を通じて、個々のスーパーが独立性を保ちつつも、スケールメリットを享受できる体制が築かれたのである。この協同組合は、昭和54年(1979年)6月にはさらに全国組織であるCGCジャパンに加盟し、仕入れルートの多様化と商品力の強化を図っていった。
協同組合ハニーは、平成5年(1993年)4月に現在の「協同組合ハニー」へと名称を変更している。 この組織は、単なる仕入れ組合に留まらず、「奉仕の精神に基づき、食生活を通じ地域社会に貢献する」「お客様第一主義の理念に基づき、お客様本位の商いを目指す」「共存共栄の精神に基づき、加盟企業、お取引先様の繁栄・発展に貢献する」という三つの基本方針を掲げている。 これは、エフレ清水店が今日見せる地域密着の姿勢と深く結びつく経営哲学であると言えるだろう。エフレ清水店は、このハニーグループの一員として、敦賀市内に唯一の店舗を構え、その地域性を色濃く反映した運営を続けてきたのだ。
ハニー新鮮館 エフレ 清水店の「エフレらしさ」を形作る要因は複数あるが、その根幹には、地の利を活かした商品戦略と、それを支える人の手間がある。まず特筆すべきは、徹底した「地産地消」へのこだわりだろう。福井県産だけでなく、さらにミクロな単位である「敦賀産」の産地表示を重視し、地元の農産物や水産物を積極的に取り扱っている。
この地産地消の取り組みは、単に仕入れを地元に限定するだけではない。例えば、敦賀の伝統野菜である「黒河マナ」の収穫時期には、店員が早朝の極寒の中、自ら畑に出向き、収穫したばかりの黒河マナをそのまま店頭に並べるという。 これは、物流コストや鮮度の問題を解決するだけでなく、生産者と消費者の距離を縮め、店と地域との結びつきをより強固にする役割も果たしている。このような手間暇をかける姿勢は、大手チェーンではなかなか見られない、地域密着型スーパーならではの特徴と言えるだろう。
また、エフレ清水店を象徴する商品の一つに「フジバーグ」がある。これは、製造者である株式会社エフレ清水本店が手掛ける名物であり、地元の「ソウルフード」として親しまれているという。 特定のスーパーが自社製造のオリジナル商品を開発し、それを地域の食文化として定着させることは、その店の独自性を際立たせる上で重要な要素となる。フジバーグの存在は、エフレ清水店が単なる流通のハブではなく、地域固有の食文化を創造し、提供する場でもあることを示している。
さらに、顧客への細やかなサービスもエフレ清水店の特徴だ。キャッシュレス決済(コジカ、PayPay、d払いなど)への対応、宅配便の取り扱い、酒類の販売、ギフトカードや切手・はがき等の販売といったサービスは、地域の生活利便施設としての機能を高めている。 加えて、「こども110番の家」への登録や、子育て応援会員向けのポイント倍増サービスなど、地域社会の一員として、特に子育て世代を支える取り組みも行っている。 これらの具体的なサービスは、地域住民の日常に寄り添い、店が生活の一部として不可欠な存在となるための工夫と言えるだろう。
全国展開する大手スーパーマーケットチェーンと、エフレ清水店のような地域密着型の「ご当地スーパー」を比較すると、それぞれの経営戦略と地域への影響の違いが浮き彫りになる。大手チェーンは、広範な仕入れネットワークと効率的な物流システムにより、低価格で豊富な品揃えを実現する。しかし、その一方で、画一的な商品構成になりがちで、地域の個性が薄れるという側面も持つ。
これに対し、エフレ清水店が加盟する「協同組合ハニー」のような共同購買組織は、地域の中小スーパーが大手に対抗するための有効な手段として機能してきた。個々の店が独立性を保ちながら、仕入れや情報共有の面で協業することで、大手チェーンにはない柔軟な商品構成と地域特化型のサービスを可能にしているのである。福井県内には、ハニー新鮮館かつやま(勝山市)のように、地域の特色ある商品を揃え、観光客も立ち寄るような「ご当地スーパー」として評価される店舗も存在する。
日本各地には、エフレ清水店と同様に地域に深く根差し、独自の路線を歩むスーパーマーケットが数多く見られる。例えば、秋田県の「タカヤナギ」は「まるっと秋田」というコーナーを設け、地元の良いものを集めている。また、山形県の「週末びっくり市」は週末3日間のみ営業し、切り立ての対面量り売りを行う精肉コーナーが特徴だという。岐阜県飛騨高山にある「ファミリーストアさとう 国分寺店」は、観光客も訪れる立地でありながら地元の日常食を提供し、名物の「あげづけ」を販売している。
これらの「ご当地スーパー」に共通するのは、単なる価格競争に巻き込まれることなく、その土地ならではの食文化や生活様式に合わせた商品とサービスを提供することで、地域住民からの支持を得ている点だろう。エフレ清水店における「敦賀産」へのこだわりや「フジバーグ」の存在、さらには店員が自ら伝統野菜の収穫に赴くといった取り組みは、これらの他地域の成功例と軌を一にするものだ。それは、効率性だけを追求するのではなく、手間を惜しまず、地域との対話を重視することで、独自の価値を創造し得るということを示している。同時に、協同組合という緩やかな連携を通じて、個々のスーパーがその地域性をより深く追求できる基盤を得ている点は、他の単独店舗型のご当地スーパーとは異なる、福井県ならではの構造とも言えるだろう。
現在のハニー新鮮館 エフレ 清水店を訪れると、そこには地域住民の日常が息づく風景が広がっている。朝9時の開店から夜9時の閉店まで、駐車場には常に車が並び、店内は多様な客層で賑わう。 店内に入ると、まず目に入るのは、地元敦賀で採れたばかりの新鮮な野菜や魚介が並ぶ青果・鮮魚コーナーだろう。季節ごとに旬の食材が並び、その時々の敦賀の恵みを実感できる。特に鮮魚コーナーでは、敦賀ならではの魚が手頃な価格で提供されているという声も聞かれる。
惣菜コーナーには、エフレ清水店ならではの「フジバーグ」をはじめ、手作りの弁当や総菜が豊富に並ぶ。共働き世帯や高齢者層にとって、こうしたすぐに食卓に出せる商品は日々の生活を支える上で重要な存在だ。店内の雰囲気は、いわゆる大型ショッピングモールのような洗練されたものではなく、むしろ地域に寄り添った親しみやすさが感じられる。店員と客の間で交わされる短い会話や、顔なじみの光景は、地域コミュニティの一端を垣間見せる。
近年、スーパーマーケット業界全体でキャッシュレス決済の導入が進む中、エフレ清水店も例外ではない。電子マネー「CoGCa」をはじめ、PayPayやd払いなどのQRコード決済にも対応し、消費者の利便性向上に努めている。 また、VJAギフトカードの販売店でもある。 これらのデジタル化の進展は、地域に根差しながらも、現代の消費者のニーズに柔軟に対応しようとする店の姿勢を示している。一方で、「こども110番の家」としての機能や、子育て支援パスポート事業への参画など、デジタルとは異なるアナログな形で地域社会への貢献も続けている。
エフレ清水店の店長である髙田氏は、「地域のお客様のお役にたてるよう丁寧な接客を心掛けている」と語る。 この言葉は、単なるサービス業としての姿勢に留まらず、地域の食生活と密接に関わるスーパーマーケットの責任と誇りを示していると言えるだろう。店全体が、地域住民の生活を豊かにし、支えるための拠点として機能しているのだ。
ハニー新鮮館 エフレ 清水店の事例は、現代において地域に根差した商業がどのような形で存在し得るかを示す一つの具体例である。大規模な資本力を持つ全国チェーンが市場を席巻する中で、エフレ清水店が長きにわたり地域住民に支持され続けている背景には、効率性や価格競争だけではない、別の力学が働いている。
それは、まず「地域固有の価値」を深く掘り起こし、それを商品やサービスとして提供する姿勢にある。敦賀産の伝統野菜を店員自ら収穫し、店頭に並べるという手間のかかる行為は、単なる商品供給を超え、地域への敬意と、食の背景にある物語を消費者に伝える試みである。また、他店にはない「フジバーグ」のような名物を生み出し、それを地域の食文化として定着させることは、その店の独自性を揺るぎないものにする。
次に、共同組合という連携の仕組みが、個々の地域スーパーの競争力を下支えしている点も重要である。協同組合ハニーに加盟することで、エフレは仕入れの安定性や情報共有のメリットを享受しつつ、自店の地域性を最大限に発揮できる自由度を保っている。これは、完全に独立した個人商店では難しい規模のメリットと、大手チェーンでは失われがちな地域への柔軟な対応を両立させる、中間的なモデルとして機能していると言えるだろう。
エフレ清水店の存在は、消費者が単に安価な商品を求めるだけでなく、食の安全性、生産者の顔が見える安心感、そして地域固有の文化や伝統に価値を見出す傾向が根強く存在することを示唆している。デジタル化が進む現代においても、物理的な店舗が持つ「場所」としての意味、すなわち地域コミュニティの核としての役割は、依然として重要である。エフレ清水店は、その静かで具体的な営みを通じて、地域社会におけるスーパーマーケットのあり方を問い直し、その可能性を示しているのである。

ゆーたなかお
キュリオす開発者。ひとり編集長。
旅と食が好き。どこにでもいます。